私は父の作るローストビーフが大変好きです。今なおこれ以上の物には出会った事はなく、多分この先もない様な気がします。随分大きく出てしまい、手前味噌で大変こそばゆく、皆様がちょっと引いてらっしゃっているかと心配になりますが、私自身悔しいですが美味しいと思ってしまっているのだから仕方ありません。

 

子供の頃初めてひと切れもらった時の事は今でも忘れません。ちょくちょく食べさせて貰える物ではないので、目を盗んでは「この場所なら怒られないだろう」と本当の切れっぱしをつまみ食いをしてたのは良い思い出です(実際はバレてたのはご愛嬌で。)

 

作り方は至ってシンプルで、サーロインを塊で表面も焼かずそのままオーブンに放り込み、超低温でじっくりと焼く。昔からこの調理方法は変わらず、今でこそこの焼き方は珍しくありませんが当時の定説を考えるとちょっと革新的ではなかったかと思います。父が最初にローストビーフを食べたのが、まだ料理の世界にも足を踏み入れていない頃大手町にあるパレスホテルでした。あまりの美味しさに衝撃を覚え、自分の店を構えた時から「いつか自分でやってみたい」と思い、自分なりに試行錯誤を重ね今の形になったようです。身の程をわきまえず、他の料理には口を出す私もこのローストビーフの前でだけは大人しくしております。

 

ソースもお肉と一緒に焼いた香味野菜を使い、赤ワインで煮て最後はコンソメスープで整える、手間をかけながらも至ってシンプルなソース。お肉にボリュームがある分ソースはあっさりに仕上げてあります。

 

クリスマスやフェアーなどの特別の時にしかお出し出来ないのが心苦しいのですが、生意気で身の程知らずな小僧でさえも素直にさせてしまうお料理を、是非一度召し上がってみて下さい。

 


素敵なお皿を見ると「どんな料理が合うかな」などと創作意欲を掻き立てられ嬉しくなりますが、その反面お皿に負けてしまうような物は作れないと緊張も致します
今回のテーマ「お皿」
写真の物は今は私達の賄いで使っている物ですが、実は当店のオープン当初にお客様に使っていた物なのです。今でこそこのお皿でお出ししたら驚かせてしまうかもしれませんが当時父と母はギリギリで始めたので全てにおいて十分な準備が至りませんでした。それでもちゃんとお客様に喜んで頂き今があります。
確かに見た目でも楽しんで頂く事も大事な要素ではありますが、時としてそう言った物も超えてしまう程の力強い「美味しさ」がある「一品」に私は憧れを持ち、いつも追い求めております。そして、私はこのお皿を見る度に素敵なお皿を使わせてもらっている環境の有り難さとまだまだ苦労の足りなさ、未熟さを痛感しております。言うなれば、私にとってこのお皿は「ストロバヤの初心」の象徴であるような気がしてならないのです。
なにより私にとってどんな素敵なお皿よりもどんな高価なお皿よりも1番大切にしたいお皿なのです。

 


この料理は私が修行先から戻ってきて初めてメニューに加えてもらった大変思い入れのある一品です。 ただその時はメニューに載せてもらおうなんてまるで考えてなく、元々修行先で勉強した(そのお店ではサーモンを使っておりました)物をなんの気になしに「僕ならこう作るかな」と考えて作り、父親達に食べてもらった所「美味しいからメニューに載せてみたら」と言う事になりました。その時は本日の料理としてお出ししてましたがお陰様で大変お客様から高評価を頂き、今では通年お出しする定番料理となりました。

 

オマール海老とホタテ貝の甘みにトマトとドレッシングの酸味が加わりそこにアボカドのねっとり感が全てをまとめてくれている、かく言う私も大変好きな一品です。添えてあるハーブ類のサラダもアクセントになっております。

 

まだまだ修行先での料理には及ばない所はありますが、当店には「ロシア風サラダ(サーモンのサラダ)」と言う昔からのメニューがある為、むしろオマール海老を使っている事に私らしさがあるような気がします。 いつまでも皆さんに愛される料理であったら大変嬉しく思い、その為に頑張って参ります。

 


当店では、昔から作り続けているデザートがいくつかあります。洋梨のタルトもそのうちの1つなのですが、このデザートにはこんな思い出話があります。 もう数年前になりますが、ある日のランチ時にいつもいらっしゃるお客様がご友人のドイツ人女性を連れていらっしゃいました。そして最後のデザートの時にそのドイツの方は洋梨のタルトを召し上がったのですが、突然目に涙を浮かべ始めたのでお客様が訳を聞くと「このタルトが昔子供の頃に祖父が作ってくれたのと同じ味がして、もう2度と食べる事が出来ないと思っていたに、まさかこんな遠い日本で再び食べられるなんて・・・」と嬉しさのあまり涙を流してしまったそうなのです。

 

当店では一年を通して季節に合わせたタルトをご用意し、常にもっと美味しい物をとレシピを微妙に変えたりしています。と言いますか、常にこの作り方で大丈夫かと疑問を持ちながら作っておりますが、ただ洋梨のタルトを作る時はいつもこの話を思い出し「これはこれで良いのだ」と勇気を頂いております。


最近割とポピュラーになって来ました「ペリメニ(ロシア風水餃子)」 正確に言うと当店の物はシベリアの郷土料理で「シベリアの水餃子」になる訳ですが、これはモンゴルの影響を受けているらしくロシアには他にも「グルジアの水餃子」などもあり、これはひと粒がもっと大きい物もあるようです。

 

当店のペリメニの中身は牛挽肉に玉ねぎやニンニクをすりおろした物などが入っており、当然1つ1つを手で包んでおります。そしてそれを茹でてお出しし、日本人好みの酢醤油とロシアらしいサワークリームの2種類を添えて召し上がって頂いておりますが、ロシアではその他に揚げたり、焼いたり、又はスープに入れたりなどそんな食べ方も出来る様です。

 

ロシアはご存じの様に大変国土が広く、色んな国と隣接している為、同じようなお料理でも影響を受ける国で地方によって少なからず違いが生まれる様です。まさにロシア料理の奥の深さの要因の1つではないでしょうか。

 

是非1度「ロシア風」の水餃子を召し上がってみて下さい。


当店では、牛肉は大変良質の物を使っております。ピロシキをはじめ、キャベツロール、ビーフストロガノフ、シャリアピンステーキ、そしてヒレステーキ。確かにヒレステーキにおきましてはメニューの中で一番値の張る物ではございますが、ただこのお料理だけを見ますと、お肉の質、量を考慮するならば大変お得な物だと思っております。実際1度召し上がって頂いたお客様は必ずと言って良いほどお気に召して頂き、また召し上がって頂いております。

 

そして、昔から現在に至るまでヒレステーキの調理に限っては殆ど父がいたします。注文を頂くと「俺に任せろ!」と言わんばかりにストーブの前に立ちます。ただ焼くだけと言ったらそれまでですが、だからこそ素材と腕に嘘が付けず父は集中して付ききっりでやっております。その姿を見ていると私も改めて料理の奥の深さと難しさを感じます。

 

夏の暑さや年末年始の忙しさでスタミナを欲する季節など、是非1度召し上がってみて下さい。


当店で1番人気のデザート。その昔、故・見田盛夫先生に日本経済新聞で紹介して頂いたり、林家正蔵師匠にテレビで紹介して頂いたりと当店では珍しく中々華々しい経歴を持つメニューであります。ですので、お客様の中には「今日は違うデザートを食べるつもりで来たのに、やっぱりこれを選んで困ってしまう」とおっしゃる方も!

 

正確に言うとココットの中に入っている白いババロアのような物をブラマンジェと言うのですが、当店ではその上に季節のフルーツを5~6種類乗せ、そしてこのデザートに欠かせない「桃のシャンパンゼリー」が乗ります。このシャンパンゼリー。もちろんシャンパンですので口に中に運んだ時はちゃんと炭酸が感じられる様に工夫をして、いつも良い状態で提供できる様に心がけております。工夫と言えば、もう1つ。季節毎に変えているフルーツですが、唯一変えないのが実はバナナでして、これが入っているのと入っていないとでは全体のまとまりが違う様な気がしてならないのです。なので、一年中バナナだけは入れてあります。

 

ずっと愛され続けているブラマンジェ。本当に大変嬉しく思うのですがその反面、心の隅ではこのデザートを越える物を作りたいと思っており、あれこれ考えてはいるのですが・・・ いつかは、必ず!と言う思いと、もっと多くの方に当店自慢のこのデザートを味わって頂きたいという思いで頑張って参ります。


ロシア料理と言えば、まず最初にこれを挙げる方が多いと思います。 もちろんオープン当初からメニューに載っていますし、当店の1番の人気メニューです。正直私はピロシキで育ててもらったと言っても過言ではないかなとも思っております。

 

そんなピロシキ。私が店に戻って来て暫くして「何か新しい味を」と思い、その中の一つとして「カレー味」を作ってみたのですが、良いんだけどカレーパンと言われてしまえばそれまでのような気がします。何かないかなと考えていると、そのヒントはなんと目の前にあったロシア料理に付きものの「サワークリーム」。これを付けてみると酸味がカレーの辛味をマイルドにし、クリームがよりコクを引き出してくれてとても合うのです。今では定番メニューの一つになっております。

 

そして、最近では「しぐれ煮味」の物もあります。少し意外な感じがしますが、また「何か新しい物を」と考えているある日の事。妻に「浅草らしい物はどう?」と言われ、浅草らしい物ってなんだろうと思い話していると「例えば佃煮とか・・・」「佃煮!」。そこで思い付いたのが、時折賄いで作ったりするしぐれ煮。これをベースに上手く利用出来ないかと試行錯誤の末できあがり今日に至ります。ですので、勝手に「浅草ピロシキ」などと呼んでおります。こういった物だからでしょうか、普段余り揚げ物をお召しにならないご高齢の方にも和風の味で美味しいとおっしゃて頂けております。

 

今後も色々と挑戦しつつ一つ一つじっくり考えて「これぞ!」と思って頂けるようなピロシキをお届けしていきたいと考えております。そして、ピロシキだけではなく店に関わる全てに対して「オープン当初」を大切にしつつ「何か新しい物を」考えては試行錯誤をし続ける事を常に肝に銘じていきたいと思っております。


是非一度は召し上がって頂きたい料理の一つである「キャベツロール」

 

和牛100%であるとか8時間以上は煮込むとか気を使い手間ひまをかけて作っておりますが、実は付け合わせである「マッシュポテト」にも気を使い、男爵いもではなくてメークインを使うとかふっくら仕上がるようにと2度裏ごしをするとか同じくらい気持ちを込めて作っております。あるお客様に「マッシュポテトなしではキャベツロールは成り立たない」とまで言って頂きたい私共の心構えとしてどんなに沢山キャベツロールの注文を頂いても絶対にマッシュポテトを切らさないようにしております。

 

これは自己満足ではあるかもしれませんが、アラカルトの時にお出しするお皿です。このお皿は大変重く大きいので正直今の時代に合ってないのかもしれませんが、その昔父と母の夢だった「ロゴの入ったお皿を作りたい」と思いの詰まったお皿です。言ってみれば、お料理もそのお皿までもが私共の気持ちがこもった一皿なのです。

 

そして、私もその想いといつまでも皆様に愛され続けられるように頑張って参ります。


元々はお客様のリクエストで作り始めたものですが今ではすっかり冬の定番メニューになりました。ただ当初は「せっかくだから他の店とは違う物を。」と色々アレンジをしていたのですが、お客様からは「ソースちょうだい」と言われ凹む日々でした。 そんな中あるレストランのカキフライを頂く機会がありました。そのお店でもひと工夫したカキフライで大変美味しく頂いたのですが、正直言うと心の中で「やっぱりソースには勝てないかな。」と思ってしまいました。その日以来私は料理によってはあえてオリジナリティを持たせずに素直にお出しした方が良いものもあることを知りました。そんな事を教えてくれた一品です。ただ唯一「牡蠣」だけは大粒で口の中で牡蠣の香りを楽しめる様なより良い物を選んで使って行こうと思っております。

冬だけの特別メニューですので、是非1度召し上がってみて下さい。


40年近く前オープン当初、この料理を研究していた父。味に納得いかず試行錯誤を繰り返す日々でしたが、それこそ毎日毎日試食させられてた母は流石に嫌気が指したらしく最後には「もう毎日何度も食べたくない」と怒り出してしまったそうです。当時は見るのも嫌だったようです。 そんな苦労?の甲斐もあって、今では当店のスペシャルになりました。